○井上明夫副議長 休憩前に引き続き会議を開きます。
一般質問及び質疑を続けます。宮成公一郎君。
〔宮成議員登壇〕(拍手)
◆宮成公一郎議員 皆さんこんにちは。議席番号7番、自由民主党の宮成公一郎です。まずもって、貴重な一般質問の機会を与えていただいた会派の先輩、同僚議員に感謝します。
それでは、早速ですが、通告に従って順次質問します。
まず、豊肥地域と宮崎県との道路アクセス向上についてですが、知事は昨年4月の就任以来、九州の東の玄関口としての拠点化を目指し、広域交通ネットワークの形成によって本県の魅力を高め、交流人口の拡大を図っていくという構想の下、東九州新幹線の整備計画路線への格上げ、中九州横断道路や中津日田道路の早期整備、東九州道の4車線化などに具体的に取り組まれており、心から敬意を表する次第です。
昨今、少子高齢化が進み、人口減少社会が到来する中、本県も簡単ではない問題を抱えていますが、人口が減っても土地の面積は減らない、逆に人口が減るからこそ移動の効率化を図り、経済圏や観光エリアを拡大し、安全性や防災面の向上等を期していかなければならない、すなわち交通網を整備していくことが求められていると受け止めています。
さて、私の暮らす竹田市は、熊本、宮崎両県と県境を接しており、両県とは古くから婚姻、法事、買物など市民の暮らしにおいて、行政区域の垣根を越えた人々の濃密な交流が行われてきました。
また、20世紀の終わりには、熊本、大分、宮崎各県の77市町村によって九州中央地域連携推進協議会が設立されました。これは、この地域で多面的な交流、連携を図りながら、交通ネットワーク基盤の整備を促進し、地域特性をいかした圏域の一体的な振興や整備を図ることを目的とした組織でした。
時代は21世紀に移り、九州の西側には新幹線が走り、また、県内でも高速道路体系の整備が進み、さらには情報化が進んでいく中でインバウンドによる観光需要が今増大しています。本県では、この3月、アドベンチャーツーリズム条例を施行したところですが、これに前後して熊本県菊陽町には世界的半導体メーカーTSMCの進出もあり、今後従業員や家族の広域観光需要の広がりも期待されているところです。
また、この1月、アメリカの経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルが公表した2024年の行くべき場所ベスト10に日本から九州が唯一選ばれていますが、海外から見れば、福岡や熊本、大分、宮崎という都道府県の単位ではなく、九州という規模で旅行を捉えていることをしっかりと受け止めなければならないと思っています。
こうした情勢を見ると、阿蘇や高千穂など観光地を抱える九州中央地域の連携を多面的に進めることは非常に重要であり、そのためにも、現在整備が進んでいる熊本県嘉島町と宮崎県延岡市を結ぶ九州中央自動車道と中九州横断道路という2つの高規格道路を有機的に結び付ける縦の軸の整備について、短期と中長期の両面から検討を進めていく必要があると考えています。
短期的な軸となるのは、30年ほど前から地元の4市町関係者で主要地方道竹田五ヶ瀬線改良促進期成会が組織され、連携した取組が継続的に行われている県道8号線の改良です。近年、宮崎県では長大橋の整備など数十億円規模の事業費を投下されているほか、熊本県でも複数の箇所で工事が動き始めています。そうした中において、本県でも随分と改良が進められていますが、残る竹田市内の未改良区間の整備を急がなければなりません。
また、中長期的には、高規格道路の整備が重要です。昨日は本県と熊本県とを結ぶ日田阿蘇道路が議論となりましたが、県境をまたぎ将来的な整備が期待されている構想路線としては、もう一本、宮崎県と結ぶ大野高千穂道路があります。この推進についても実現に向けた検討を進めていただきたいと切に願っています。
いずれにしても、昨今の情勢を踏まえると、昨日の県北西部地域と熊本県との道路アクセス向上の議論とあわせて、我が豊肥地域と宮崎県との道路アクセスを向上させていくことが重要であると考えます。
こうしたことを踏まえ、豊肥地域と宮崎県との道路アクセス向上にどのように取り組んでいくのか、知事のお考えを伺います。
以下、対面席から一問一答方式により質問します。
〔宮成議員、対面演壇横の待機席へ移動〕
○井上明夫副議長 ただいまの宮成公一郎君の質問に対する答弁を求めます。佐藤知事。
〔佐藤知事登壇〕
◎佐藤樹一郎知事 宮成公一郎議員の豊肥地域と宮崎県との道路アクセス向上についての御質問にお答えします。
少子高齢化や人口減少が進む中、県勢を発展させるためには、地域やまちの魅力を高め、人や物の流れを活性化する広域道路ネットワークの整備が不可欠です。
こうした中、九州の中央部を東西に横断し大動脈となる中九州横断道路と九州中央自動車道の整備が進められており、観光をはじめとして、交流人口を大幅に拡大させるチャンスが到来しています。この二つの道路が完成し、東九州自動車道と接続すると大分、熊本、宮崎の高規格道路による循環型ネットワークが形成されます。
これらの高規格道路の整備効果を最大限に発揮させ、広範囲に波及させるためには、インターチェンジへのアクセス道路や高規格道路を相互に結ぶ道路の整備が重要です。
そのため、竹田市内に整備される中九州横断道路の三つのインターチェンジを円滑に利用できるよう、アクセス道路として対策が必要な路線やその整備内容について、関係機関と連携して検討しているところです。
議員御指摘の竹田五ヶ瀬線の改良については、これまで市街地側を中心に進めてきており、本年3月、田原地区においてバイパスを開通させたところです。現在は、入田地区において延長970メートルの拡幅事業を実施中であり、安全かつ快適に利用できる道路整備に努めています。
なお、当路線の整備状況は、熊本県や宮崎県とも情報共有を行っており、県境部に残る3キロメートルの未改良区間については、中九州横断道路の進捗や管内及び両県内の状況を踏まえながら検討していきます。
一方、豊後大野と高千穂を結ぶ新たな道路については、日田-阿蘇間の道路と同様、長期的な視点で検討を重ねていきたいと考えています。
今後も、整備が進む高規格道路を活かすために、アクセス道路や竹田五ヶ瀬線をはじめとした道路ネットワークの充実に努めていきます。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 御答弁ありがとうございました。大分県では、この春、交通政策局を企画振興部に新設していますし、桑田副知事を国土交通省から招聘したことだけを見ても、知事の姿勢、お考えの方向性が示されているものだと受け止めているところです。
さらに、宮崎県と豊肥地域のアクセス向上についても長期的な視点を含めた御答弁をいただきましたが、この地域をもう少し広く見つめながら再度質問します。
と申しますのも、九州中央自動車道と中九州自動車道、南北に接続するアクセスルート、この形成についてはさらに視野を広げて、もう少し北の方、北の久住高原に続く国道442号までの縦軸の道路を総合的、計画的に整備していくことも重要な視点ではないかと思っています。
具体的には、さきほど言った県道8号線のほか、九重野荻線、穴井迫荻線、白丹竹田線、笹倉久住線等、これは県道の関連箇所を現道改良しながら久住高原までのアクセスを向上させるというものです。これによって多くの沿線住民が、荻インター、竹田西インター、竹田久住インター、それぞれ仮称ですが、三つのインターを利用しやすくなり、九州中央自動車道と中九州横断道路を南北に接続した効果がさらに国道442号沿線にまで及ぶこととなります。
あわせて、長年懸案となっている国道442号、いまだ2車線となっていない大分市今市山中から豊後大野市朝地町の温見の間の改良を進めることも当然のことながら必要となっていきます。国道442号や現在改良が進められている県道庄内久住線、これらを経由して国道210号までのアクセスを向上させる中で、大分市以北や由布市など久大地域、この沿線の住民にとっても観光や産業の面で大きな効果をもたらすのではないかと期待されますが、この点について土木建築部長に見解を再質問します。
○井上明夫副議長 五ノ谷土木建築部長。
◎五ノ谷精一土木建築部長 まず、御質問の中で一つ目が議員御指摘の路線で、九重野荻線、白丹竹田線など、竹田市内の県道ですが、そちらの今御指摘いただいた路線については、観光や産業などの面において地域を支える道路としては大変重要だと認識しています。
まずは幅員の狭い区間、狭小な区間などに対応するために、現在、九重野荻線の瓜作地区をはじめとして、白丹竹田線の添ケ津留地区、それから、笹倉久住線の白丹地区で道路改良を行っているところです。引き続き道路利用状況を踏まえながら、地域の御意見を踏まえつつ整備を進めていきたいと思っています。
もう一点、国道442号の山中から温見の件です。こちらについては、昨年度に石合地区、大分市側の700メートルの区間の改良が終わりました。残りの約1.5キロメートル区間について、まず大分市側から、待避所の設置だとか、あるいは視距改良だとか、そういった改良を少しずつやっていきたいと思っています。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 土木建築部長、詳細に御答弁ありがとうございました。
新たな長期計画では、最寄りインターチェンジまでおおむね15分で到達できる地域の割合を目標指標に掲げています。高速道路網の効果を広げていく、正にこの視点が大切だと思っています。豊肥地域と宮崎県のアクセスが向上して、現道改良、あるいは新たな構想によって縦の軸が北へとさらに伸びていくと、その効果が県下全域に広がっていくことを期待していることを申し上げて、この質問を終わります。
続いて、2点目、遠隔教育について伺います。
2023年に県内で生まれた子どもの数は6,259人で、前年より500人ほど減少し、12年連続で過去最少を更新しました。少子化に伴う影響は様々な分野に及び各所で議論がなされていますが、教育分野もそのうちの一つです。実際、小中学校の統廃合問題や県立高校の定員削減などにも既に強く影響を及ぼしています。
このような中、本県ではどの地域に住んでいても生徒の希望に応じて多様で質の高い教育を受けられるよう、遠隔教育に力を入れていくこととしています。
そして今後、さらに人口が減少し、少子化が進展していくことが予測される中、遠隔教育に求められる役割はますます大きくなると考えられます。
もちろん、この先も対面での授業が主体であることに変わりはないとは思いますが、遠隔教育を積極的に活用することで、生徒の個性や多様な学習ニーズに対応し、一人一人の可能性を最大限引き出すこともできるのではないかとその効果に期待しているところです。また、本年第1回定例会で、我が会派の阿部英仁議員の代表質問に対し、知事は遠隔授業について全国のモデルとなるよう取り組んでいくと答弁されており、今後、本県独自の先進的な取組、特色ある取組が形になって現れてくるのではないかと期待しています。
現在、本県における遠隔教育の議論は、難関大学を目指す生徒を対象としたものが中心となっています。一方で、進学を希望する生徒にこだわらず、基礎的なテーマを集中的に丁寧にフォローアップしていくことも必要ではないかと考えます。加えて、学校が異なっていても生徒同士が切磋琢磨できる遠隔教育の環境を整えることによって、遠隔教育の多様化、汎用化を進め、その裾野を広げていくことも必要ではないでしょうか。
折しも全県一区制度の検証が行われると伺っていますが、地域の高校の在り方は本県の均衡ある発展とも密接に関係するテーマですし、教育行政の議論の中においても最も政策的な論点の一つであると考えられます。そして、本県において地域の高校の在り方を考える際には、遠隔教育の議論と切り離すことはできないものと考えています。
そうした中で、今般の補正予算案において、遠隔教育システムの構築の加速化や充実に向けた事業が提案されました。これは、前回の地域の高校教育の議論に対する知事からの答えの一つであると思われますが、その背景や狙い、さらには、知事が思い描いているこの先の遠隔教育の活用方法などについて、私は大変注目しているところです。
こうしたことを踏まえ、本県独自の特色ある遠隔教育についてどのようにお考えか、知事に伺います。
○井上明夫副議長 佐藤知事。
◎佐藤樹一郎知事 遠隔教育についてです。
人口減少の進行に伴う生徒数や教員数の減少が予想される中で、県内どの地域においても生徒の可能性を最大限に伸ばすことができるように、遠隔教育の推進を図っているところです。
特に地域の高校では、生徒の多様な進路実現にもつながるため、魅力の向上が一層図られることを期待しています。
この遠隔教育について本県では、学校間連携方式と配信センター方式の二つの方式に取り組んでいるところです。このうち、学校間連携方式は、文部科学省の研究指定を受けて、令和3年度から、専門科目等を実施する学校から地域の小規模校などに対して、主に福祉や商業などの遠隔授業を行っています。
他方、現在準備中の配信センター方式では、大分上野丘高校内に配信拠点となる施設を整備して、地域の普通科設置校等に双方向型の習熟度別授業を配信することとしています。配信センター方式では、北海道や高知県の例がありますが、本県では独自の二つの取組による大分モデルを構築したいと考えています。
取組の一つは、2校合同での遠隔授業の実施です。異なる学校の生徒が同じ授業に参加することで、生徒同士の交流が促され、学びに向かう意識の高揚や多様な価値観に触れることが期待できます。そのため、今議会に提出した補正予算案では、異なる2校の生徒が円滑に意見交換等を行い、互いに刺激し切磋琢磨できるように、拡張カメラ等を導入することとしています。
二つ目は、遠隔授業に加えて行う生徒への学習支援です。大分市内も含めた全ての普通科設置校等において、夏休みなど長期休業中の集中講座や動画教材の配信を来年度から開始できるよう、必要な機器整備も今般の補正予算案に盛り込んだところです。
こうした取組に加えて、スタンフォード大学やAPUなど国内外の大学と連携した特別講座の配信や、中学校の技術科における大学教授等によるプログラミング教育遠隔授業にも引き続き取り組んでいき、より充実したものにしていきたいと考えているところです。
遠隔教育は様々な可能性を秘めており、議員御提案の多様化、汎用化も念頭に置き、全国の遠隔教育の先進モデル、大分モデルとなるよう、教育委員会と共にしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 遠隔教育に対する知事のお考え、そしてまた、住み慣れた地域に暮らしていても学べる環境が広がっていくという、その可能性が広がっていくという御答弁、ありがとうございました。
少し話はずれるかもしれないんですが、先日、来年度の県立高校の定員が240人減少するということが発表されました。私の母校、竹田高校も20人の減となっていますが、地域や学校関係者は将来的な学校の存続に大きな不安を抱えています。そして、学校の存続問題は、地域交通、地域経済に与える影響も非常に大きく、学校振興が地域振興と表裏一体と言っても過言ではないと思います。
遠隔教育の推進のみをもって解決できる課題でないことは重々承知していますが、遠隔教育が一つの手段となり得るならば、その活用方法を拡充していくことを今後も引き続き検討していただきますようお願いします。
それでは、次の質問、困難な状況にある方々への支援についてに移ります。
まず最初に生活困窮者への支援についてですが、平成27年4月に施行された生活困窮者自立支援法は、世界的な同時不況の影響等により、国内でも生活に困窮する者が増え、生活保護世帯が増加していく中で、生活保護に至る前の段階での自立支援策を強化する必要が高まり施行されたものです。
その後、生活困窮者に対する自立支援策が充実していく中で、生活保護受給者数は減少傾向を続けるなど、生活困窮の深刻化を予防する手段として本制度の有効性は一定の評価を受けてきたところです。
しかしながら、令和2年からのコロナ禍により、就業支援や住居確保等の課題が顕在化し、新規の相談件数は前年の3倍になったとされています。そんな中、経済的な支援策として、緊急小口資金や総合支援資金の特例貸付けや住居確保給付金の審査基準の緩和などの対策が取られたことは記憶に新しいところです。
そして、昨年5月のコロナの5類移行に先立って、これら特例貸付けの返済が同年1月から開始されました。しかしながら、昨年末までに返済期限を迎えた貸付金は37%程度しか返済されていないと厚生労働省から発表されています。
他方、大手企業の賃上げは5.5%を超え三十数年ぶりの高水準となるなど、景気のいいニュースも耳にするようになりました。片やこの間、消費者物価は上昇を続けており、特に生活していく上で必須の食料品や燃料費等の価格の高騰は、低所得者ほど大きな負担となっています。今後この傾向が続くならば、生活困窮に関する相談件数も増えていくのではないかと懸念されるところです。
折しも、この4月に生活困窮者自立支援法が改正され、支援関係機関の連携強化等の措置を講ずることなどが都道府県等に求められました。
こうしたことを踏まえ、生活困窮者を取り巻く現状を鑑み、制度の周知や今後の支援にどのように取り組んでいくのか、福祉保健部長に伺います。
○井上明夫副議長 工藤福祉保健部長。
◎工藤哲史福祉保健部長 現在、各市町村に設置された自立相談支援機関において、金銭面のみならず、健康問題や就職、居住、人間関係など、多岐にわたる相談を受け付けているところです。
具体的な支援としては、本人の意欲や適性に応じた就労体験や訓練、家計改善への支援であるとか、家賃の支払が困難になった離職者への個別の給付等に加え、そうしたものを複数組み合わせた支援プランの策定も行っているところです。
コロナ禍の令和2年度においては、県全体で約1万2千件の相談が寄せられたところであり、このことは自立相談支援機関の認知度の向上にもつながったことと考えています。今後も、市町村の広報誌やSNS等を活用した周知に努め、そのほか民生委員や居住支援法人など、地域の協力もいただきながら、必要な方に相談支援が確実に行き届く、そうした制度としていきたいと考えています。
また、コロナ禍で顕在化した孤独や孤立や生活困窮などの複雑・複合化した課題解決に向け、重層的支援体制を整備する市町村を現在後押ししています。
引き続き、改正法の趣旨も踏まえ多機関、多職種との連携を一層強化していきながら、生活困窮者お一人お一人に寄り添った支援に努めていきます。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 様々な対策、支援策を講じられる中、認知度も向上しているということです。引き続きよろしくお願いします。
ところで、今あらゆる物価が上昇している中で、本県の最低賃金は過去最大の55円の引上げが行われる予定です。しかしながら、年金の額は、マクロ経済スライドによって調整されるため、物価上昇に見合った改定は高齢者にとっては行われず、大きな負担になるのではないかと思います。政府は給付金の支給などの対策を講じていますが、働くことができず生活が本当に苦しい人たちに対しては、より丁寧な支援が必要となってくると思います。
御案内のとおり、生活困窮者自立支援制度を市町村と共に最前線で動かしているのは社会福祉協議会です。社協が市町村と共にその機能を十分に発揮できるよう、県としてもその役割を今後も果たしていただきますようお願いし、次の子どもの貧困対策について質問します。
戦後の混乱期を過ぎ、高度成長期を経て、社会保障制度が整備される中、我が国は世界で有数の先進国となりました。しかしながら、足下では超高齢化社会の到来、少子化の進展等、新たな課題に直面しており、ホームレス、ワーキングプア、ヤングケアラー、子ども食堂など、貧困に関する言葉を日常的に耳にする社会、これが今の日本です。
このような状況の中、国は、いわゆる貧困の連鎖によって子どもたちの将来が閉ざされることがないよう、平成26年に子どもの貧困対策の推進に関する法律を施行しました。そして、全ての子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指し、子どもの貧困対策を総合的に推進することが重要であるとの方針を掲げました。本県でも、平成28年3月に大分県子どもの貧困対策推進計画を策定し、市町村と連携を図りながらその取組を進めてきました。
令和3年3月の改定時には、母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づく自立促進計画と一体的な計画として、大分県ひとり親と困難な生活環境にある子どもの支援計画を定め、現在各種取組を進めているところです。
こうした取組の成果もあって、子どもの貧困率は2012年の16.3%、2018年の14.0%から2021年には11.5%にまで低下していますが、今なお9人に1人の子どもが貧困状態にあることも事実です。また、ひとり親家庭では半数近くの世帯が貧困状態にあるとの衝撃的な調査結果もあわせて公表されているところです。
いずれにしても、子育てや貧困を家庭だけの責任とするのではなく、保護者への精神的支援と経済的支援を行いながら、地域や社会全体で支え、課題を解決していく取組が求められます。
そのような中、国はこの6月、議員立法で法律の名称をこどもの貧困の解消に向けた対策推進法に改め、貧困の解消を目指すことを明確にしました。また、こども家庭審議会にワーキンググループを新設するなど、今後、子どもの貧困問題の対策強化を図っていく方針と伺っています。私は、本県でも子どもの貧困に改めて真剣に向き合う中で、貧困の連鎖を断ち切るための取組を強化していくことが必要と考えます。
そこで、今後、子どもの貧困対策にどのように取り組んでいくのか、福祉保健部長に伺います。
○井上明夫副議長 工藤福祉保健部長。
◎工藤哲史福祉保健部長 県の現行計画では、教育、生活の安定、保護者の就労及び経済的支援の四つを重点施策としており、計画に沿って、今年度は新規の六つの事業を含む75の事業による支援策を全庁を挙げて総合的に推進しています。
また、子どもたちの大切な居場所となっている子ども食堂の活動を社会全体で支援する動きも年々広がっており、今年で4回目となるふるさと納税を活用したクラウドファンディングをちょうど今月から募集開始したところであり、11月までの3か月間、しっかり募集していきたいと思っています。
さらに、子どもの生活・学習習慣等を把握するため、今年7月に小学校5年生、それと、中学2年生の子どもとその保護者約4万人を対象とした悉皆調査を5年ぶりに実施しました。
回答の中を見ると、経済的な理由で塾や習い事に通わせることができないなどの声もあり、結果を詳細に分析し、学習指導や生活相談につなげるなど、子どもと保護者の意見を反映した対策を速やかに講じることとします。
今般の改正法の趣旨を踏まえ、子どもの現在の貧困を解消し、その連鎖を断ち切るということで、生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されることのないように引き続き支援をしていきたいと考えています。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 クラウドファンディングとかアンケート調査の実施とか、もっと言えば全庁を挙げてという言葉もありました。既に強化されているということだと思いますが、子どもの貧困を語るときに、周囲から生活が苦しいと思われたくないという親の意識、これによる見えない貧困という言葉にぶつかることがあります。
一方で、ひとり親家庭の貧困に関しては、今般の民法改正、共同親権の導入については様々な議論があったところですが、養育費の支払が滞った場合の先取特権や法廷養育費制度の創設、これは広く評価されているのではないでしょうか。
いずれにしても、貧困を理由に子どもが将来に絶望感を抱かないよう取り組んでいくことが必要だと思います。
さきほど部長の答弁の中に重層的支援体制整備事業ということがありましたが、高齢者、障がい者、子ども、生活困窮者を一体的に支えていく取組、多くの市町村が県下でも取り組んでいますが、この枠組みをいかすなどして社会全体で子どもの貧困に対して向き合っていく、そういった仕組みをつくっていくことが必要ではないかと申し上げ、次の再犯防止について質問します。
今年5月、滋賀県で保護司の男性が更生支援していた保護観察中の者によって殺害されるという痛ましい事件が発生しました。この事件は、罪を犯した人や非行に走った人への社会復帰支援、更生を支える全国の保護司、県下にいる630人余りの保護司の皆さんのみならず、社会全体に大きな衝撃を与えました。
明治時代に篤志家が始めた出所者の保護をその源とし、日本独自の制度として定着した保護司制度ですが、この制度の根幹を揺るがしかねない衝撃的な事件は、保護司の成り手不足に拍車をかけてしまうのではないかと危惧しているところです。
全国の刑法犯の認知件数は、戦後最多の285万件余りだった平成14年を境に年々減少を続け、令和3年には約57万件とピーク時の5分の1の規模になりました。しかしながら、その後、この2年、連続して増加し、令和5年は70万件を超えており、今後の動向を注視すべき状況にあるとされています。
また、令和4年の再犯者率は47.9%と約半数が再犯者という状況になっている中で、再犯防止に向けた取組は今後ますます重要となっています。
このような中、平成28年12月に施行された再犯の防止等の推進に関する法律では、再犯の防止等に関する施策に関して、国や地方公共団体の責務を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に推進していくことが法律に明記されました。
これを受け、本県では平成31年3月に大分県再犯防止推進計画を策定し、犯罪が繰り返されない、新たな被害者を生まない、県民が安全で安心して暮らせる社会の実現を目指して取組を進めてきました。そして、本年4月には地域による包摂の視点を加えた第2次計画を策定しています。
犯歴のある人の多くは、安定した仕事に就けない、住居がない、高齢である、医療を必要としているなど様々な問題を抱えており、県は市町村と共に支援を行い、場合によっては特性に応じた専門的な支援の実施に努めるなどの規定が盛り込まれています。
こうしたことを踏まえ、これまでの取組の振り返りも含め、再犯防止に今後どのように取り組んでいくのか、生活環境部長に伺います。
○井上明夫副議長 島田生活環境部長。
◎島田忠生活環境部長 再犯防止についてお答えします。
県では、国、保護司会や弁護士会などの関係機関で構成する再犯防止推進協議会を設置し、市町村と共に再犯防止に向けた立ち直りの支援に取り組んでいるところです。
矯正施設などを退所後、自立した生活が難しい高齢者や障がい者については、県が設置する地域生活定着支援センターで、受入施設の確保や個別の事情に応じた福祉サービスが利用できるよう支援しています。
また、居住支援協議会の設立やその活動の促進、犯罪をした人などを雇用する協力雇用主として登録した建設業者への優遇措置など、住居や就労の確保に向けた取組を推進しているところです。
本年4月に策定した第2次計画に基づく取組としては、この7月に再犯防止電話相談窓口を開設したところです。ここでは、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持つ相談員が専門的な支援機関や公的機関などを紹介し、本人やその家族の状況に応じた適切な支援先につないでいくこととしています。
今後も引き続き、国や市町村、民間団体などと連携を図り、地域による包摂の推進の考え方の下、円滑に地域に立ち戻ることができる社会の構築を目指していきます。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 今御答弁にありましたが、法律の施行によって、確かに再犯防止の取組が進んできました。そしてまた、市町村も再犯防止計画を策定するなど進んでいますが、誤解を恐れずに言えば、多くの地方公共団体にとってまだまだ再犯防止、身近な課題として受け止められていないのではないかと思っています。
保護司が関わると再犯率が低いというデータがあります。今現在も保護司を必要としている方が現実に存在しています。罪を犯した人たちを孤立させない社会を築くために、保護司や更生保護女性の会の皆さんの力をこの社会は必要としています。そして、保護司を孤立させないためには、県は市町村と共により一層取組を進めていく必要があるんだろうと申し上げて、四つ目の質問、農林業の振興についてに移ります。
まずは農地の再編整備について伺います。
先般、食料・農業・農村基本法が法律制定後初めて改正されました。法の名前にあるとおり、食料と農業・農村は切っても切り離せない関係にあり、地域の維持、地域文化の継承等においても重要な役割を果たしています。しかし、近年は担い手不足による集落機能の低下、共同管理体制の弱体化、耕作放棄地の増加など、様々な課題に直面しています。
このような中、本県の農業を維持、発展させていくためには、作業の省力化や効率化に資する農地の基盤整備が重要になると考えます。
特に中山間地域が多い本県では、区画が小さく不整形となっている農地がいまだ多く残る中、基盤整備を行い、用排水路や農道を再整備することによって、車両の乗り入れや大型機械の搬入等を可能とし、労働生産性の向上に努める必要があるものと思われます。
実際に、基盤整備後の優良農地では、稲作労働時間を6割短縮でき、経営規模は2.2倍に増加するなどの効果があったとの報告もあります。新規就農者の確保や企業参入、スマート農業への移行、畑地転換など、こういった波及効果が生まれた事例も多く耳にする、目にするところです。
このような農地の再編整備を実現するためには、地域や行政等の関係者が一体となって構想計画を策定し、地域全体が同じ方向を向いて進めていく必要があります。県としても、地域の構想計画に基づき、農地の集積・集約化などに取り組んでいく必要があります。
しかし、こうした農地の再整備に取り組んでいない地域も多く残る中で、将来的に食料供給、地域コミュニティ、地域文化等の農村の機能を維持、継承することが困難になりつつある現状を懸念しているところです。
そこで、将来的な農業・農村の維持、発展に向けて不可欠な農地の再編整備に今後どのように取り組んでいくのか、農林水産部長に伺います。
○井上明夫副議長 渕野農林水産部長。
◎渕野勇農林水産部長 担い手が減少する中、将来にわたり農業・農村の維持、発展を図るためには、農地の集約化や大区画化等の再編整備を積極的に進め、生産性を大きく向上させることが重要です。
そのためには、議員御指摘のとおり、地域全体が同じ方向を向いて、総力を挙げて農地の利活用に取り組んでいく必要があります。
現在、県下各地で地域計画の策定が進められており、その中で農地と中核的経営体のマッチングを図り、そして、スマート技術の導入も踏まえた整備構想づくりにつなげていきます。
整備にあたっては、地域の特性を踏まえた品目選定や、地下水位、土壌調査結果に基づく排水対策や土壌改良などのきめ細かな対策も重要です。例えば、竹田市高源寺地区では、若手夫婦がピーマン・白ねぎ栽培で就農したほか、新たな企業も参入するなど、整備された農地の活用のみならず地域活性化にも結び付いているところです。
今後は国産回帰が進む果樹などを中心に、企業ニーズに即した基盤整備を推進することも大切であり、市町村と連携し大規模園芸団地の整備に取り組むほか、農地の高機能化による生産性の向上を図る整備を積極的に進めていきます。
こうしたことを通じ、農業成長産業化に資する農地の再編整備を着実に進めていきます。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 農林水産部長から御答弁いただきありがとうございます。
1年ほど前に、コオロギを食べるという話題がありました。しかしながら、私はお米を食べたいと思いました。
今、スーパーに米がないと連日ニュースになっています。世界の人口増加と気候変動に伴う将来的な食料不足が危惧される中、この国の農業をどうするのか、農村をどうするのか、この視点がなければ食料不足の問題は延々と繰り返されることでしょう。農業振興計画、これら等々に基づいて着実に計画的な推進が必要だと思っています。
最後の質問に移ります。森林環境税について伺います。
令和6年度から、一定の所得のある人に対して一律1千円の国税としての森林環境税の徴収が始まりました。これは近年の災害の激甚化や気候変動が進む中で、森林整備による山地災害の未然防止や放置林の解消などを図るために、恒久的な財源を確保することを目的としているとされています。
また、今般の森林環境税と一対となって制度化された森林環境譲与税は、既に令和元年度から県や市町村に対して譲与が開始されており、森林クラウドシステムの整備や林業アカデミーでの研修など多くの事業に有効活用されていると聞いています。
一方で、国の森林環境税が検討される以前から、全国37府県ではそれぞれ独自の森林環境税を地方税として徴収してきた実態があります。本県においても森林資源の循環利用を促進するために大分県森林環境税を平成18年度から導入しており、再造林の推進や鳥獣被害対策等に活用していると伺っています。
そして今般、国の森林環境税の徴収が始まったことにより、森林の整備等に関する税は国税と地方税が併存している状況になりました。しかも双方の税の名称も同じであることから、どのような事業にどちらの財源が活用されているのか不明確に映るという課題が生じてしまうのではないかと危惧しています。
同じ目的のために二つの税が課税されているように県民が感じることのないよう、それぞれの税の目的や使途を明確にするとともに、県民に理解してもらうよう努めていく必要があると考えます。
こうしたことを踏まえ、県の独自課税である森林環境税と国の森林環境税、森林環境譲与税の有効活用に向けて、これまでの取組を踏まえ、今後どのように取り組んでいくのか、農林水産部長に重ねて伺います。
○井上明夫副議長 渕野農林水産部長。
◎渕野勇農林水産部長 国の森林環境税は、市町村による公的な森林管理を推進するため、経営放棄された森林の整備や担い手の育成等に活用されており、県は使途の目安となるガイドラインの作成や技術的助言により市町村を支援しているところです。
譲与開始から5年が経過し、市町村への譲与額に対する活用率は累計で約9割となり、これまで930ヘクタールの経営放棄林が解消されたところです。
一方、県の森林環境税は、県域における森林資源の循環利用を進めるため、再造林の推進や鹿の被害対策、次代を担う子どもたちの森林・林業教育の充実等に活用しています。中でも、全国に先駆けて取り組んだ低密度植栽による再造林促進事業は、昨年度1,069ヘクタールの植栽に支援し、再造林率を76%まで引き上げるなど確実に成果を上げています。
また、議員御指摘のように、両税の違いが不明確に映ることに対しては、ホームページやSNS等を活用し、目的や使途などについて見える化をするなど、丁寧に分かりやすく伝え、より一層県民の皆さんの理解が深まるよう広報を強化していきます。
今後も引き続き、これらの取組に両税を有効活用し、本県の森林整備や林業振興に努め、森林の公益的機能の発揮や森林資源の循環利用を推進していきます。
○井上明夫副議長 宮成公一郎君。
◆宮成公一郎議員 確実に成果を上げている中、山林や中山間地域を多く抱える本県においては、新たな税制度の意義や目的に対しては、きちんと、しっかりと説明していけば理解を得られるものだと受け止めています。県民への周知にしっかりと努めていただきますよう重ねてお願いします。
終わりになりますが、今年正月元旦の能登半島地震、お盆前には南海トラフ地震を想起させる日向灘の地震、防災への備えを県民も改めて強く意識したものと思います。しかしながら、特に南海トラフに関しては、津波への警戒が強い反面、強い地震は県下至るところで発生するということを忘れ、どこか他人事のように捉えている人も、特に内陸部には多くいるのではないかと懸念しています。
また、日本列島を縦断した台風第10号は、県下にも小さくない被害を与えました。被害に遭われた皆様に心から御見舞い申し上げますとともに、復旧に当たられている皆様に感謝します。
まだまだ続く台風シーズン、県民の皆様が御安全に平穏に過ごされますことを心からお祈りしながら、私の一般質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○井上明夫副議長 以上で宮成公一郎君の質問及び答弁は終わりました。